三ヶ根山のエンジン   第 2 章 B-29のエンジン概要

1)B-29搭載エンジンの型式

対日戦の B-29搭載エンジンの型式は、
米国ライト社(Curtiss Wright)製で、
ライト R-3350として名高い。

R-3350-21型(キャブレター方式)
R-3350-23型(燃料噴射/1944後期〜)

が搭載された。
私は8年前に、そのエンジンの写真をドイツのKMT GmbH社のMr Gerd Kramerから入手していたので公開します。 彼は、今でも新品というので、当時補給用に生産されたとものと思われます。

2)R-3350の概要

現時点では、R-3350の情報はHPで容易に検索できますが、ここでは、兜カ林堂発行の 『世界の傑作機ボーイングB-29』1995.5発行によると、

当時のR-3350の主要項目は、

・空冷複列星型18気筒
・筒径(シリンダー径):155.6mm
・行程(ピストンストローク): 160.2mm
・総排気量(シリンダーボリューム):54,86L

・直径: 1,413mm
・乾燥重量:1.212kg
・ギア比:0.35 (20 : 7)
・圧縮比:6.85

・離昇出力:2.200hp/SL/2,800rpm
・戦闘出力:2,200hp/25,000ft(7,620m)/2,600rpm
・標準出力:1,800hp/14,000ft(4,267m)/2,400rpm
・ターボ過給機:GE製B-11,ギア比 6.06 : 1、
2基装着、電子装置で自動制御

 右図は、『B-29操縦マニュアル(光人社)』からの引用ですが、これらの情報、写真と図をご覧いただき、 日本本土爆撃当時のB-29エンジンの概要を理解いただけると思います。

3)R-3350の生産

 ライトR-3350の生産は、Curtiss Wright社で進められた。
試作間もない、成熟途中のR-3350は次々に発生する品質問題により設計変更が多く、 その大増産は、苦難の連続であったという。

『歴史群像2002.4No.52・学研』によると、 試作機はテスト飛行中にエンジンのオーバーヒートで火災墜落、名パイロット他10名のテストクルーと墜落地点の 工場の20名が犠牲になり、真っ先に疑われたのはR-3350のオーバーヒート火災であった。

この事故は、米国内で大問題となり、開発もテストも一時停止となった。 調査の結果は、燃料タンクのフィラーキャップの問題であったが、R-3350は、 最後までオーバーヒートによる火災がつきまとった。

そんな中で、待ったなしのエンジン大増産が急がれた。 なにしろB-29 1機につき4基のR-3350が必要となる。その他にも予備のエンジンも必要である。

ライト社のエンジン生産量は、3倍に膨れ上がり、オハイオ州シンシナチの工場は全てR-3350の生産にかかりきりとなり、 さらにニュージャージー州ウッドブリッジにもR-3350生産用の新工場が建設された。それだけではまだ足らず、 自動車メーカーであるクライスラー社のイリノイ州シカゴにあるダッジ・シカゴ部門も生産に参加したという。

B-29は対日戦用に約4000機生産されたので、補給用を含めれば、16,000基 + 補給用で かなりの数が製造されたと思われます。


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